巴紋の左右について



もともと巴は、日本では、形が勾玉に似ていることから、古代の宝器や玉すなわち霊から神霊に転じた。また渦を巻いた形から水を意味していますが、中国でも、水の渦や蛇がとぐろを巻いた形といわれ、韓国国旗の二つ巴は宇宙を表わし、昔琉球では左御紋といい、国王紋でしたが、沖縄の尚氏の三つ巴には別の意味もあるようです。
「大釜でそら煮えのする三つ巴(江戸の川柳子)(丹羽基二著 家紋百話第七十話)。」

沼田頼輔著の「日本紋章学」では、巴は鞆絵と書くのが正しく、弓手(左手)の手首につけた鞆の形を描いたもので、巴の字を鞆絵に代用したのは、巴の字の形が、鞆絵に似たのに基づいているとしています。この巴紋には右巴と左巴があり、右回転が右廻り、左回転が左廻りと呼ばれるとしていますが、巴のどの部分(大きい頭か細い尻尾)を基準にするかで、正反対の回転になってしまいます。沼田先生は「江談抄」「四天王寺聖霊絵巻」の例をあげ、「見聞諸家紋」の巴の左右は間違いだとしています。著書「紋章の知識100」の中でも、巴は水の渦に象ったもので、頭は太き部分をいい、尾は細き部分をいい、頭の左に向かっているのは左巴であり、頭の右に向かっているのが右巴と述べています。もっとも上絵師の泡坂妻夫著「家紋の話」の中では、巴の左右は、渦の巻き方による名称ではなく、十の形の各先端に鉤が出た卍と同じく、鉤が出た方向が左なら左卍、右なら右卍で、巴も同類型としています。上絵師の口伝によれば左掌を握って手首を見て、その形が左巴の形になり、右掌を握れば、その形が右巴の形としているそうです。迷った時に便利な見分け方ですが、時代により右巴になったり、左巴となったりよく解らないのが巴紋です。